復旧不定期日誌76, 指紋付きプラッタ

ディスク表面に指紋が付着した状態で返送され、
データが諦められずご依頼いただいた案件となっております。

まず要点といたしまして
「ディスク表面に指紋が付着」という事実が論外な点です。

ハードディスクは無塵室にて組み立てられ、ホコリの進入すら許されておりません。
まだホコリならば除去できますが、表面に粘着して付く指紋は厳しいです。

それ以前に指紋付き自体があり得ず、そこからデータを出す技術自体が必要ないわけで、
それを理由に対応不可となっても致し方ないと思います。
※ 本案件は弊社にご依頼される前、3社さまで対応不可が提示されております。

お客さまによりますと、HDDが破損してしまいデータ復旧を検討。
※ 異音が生じており、既に認識自体もなく、業者への依頼を決心されたようです。

(最初に出された)業者に問い合わせたところ、過去の実績より「確実に復旧」できると言われる。
そして実際に物を送りましてお見積もりをお願いしたところ、
お見積もりが53万円と高額だったゆえ迷っていた矢先、
海外のあらゆる技術を駆使するため確実に復旧できるとなだめられ、
それであれば安心して依頼できると思いお願いしたら、
3週間後、連絡のないまま復旧不可で突然戻ってきた、との事です。

物理的な重度障害と予測される媒体を、
調査の前にも関わらず確実に復旧できる(100%成功)と言い切り、
復旧不可だった点より、初期診断すら行われていない可能性もあります。

2022年1月追記:今でも、 調査の前にも関わらず確実に復旧できる(100%成功)と言い切り 、
ドライブが開封されてしまい、
最終的には報告書もなく復旧不可で戻されてしまう例が数多くございます。

すなわち、物を受け取ったら型の決まっている診断結果をランダムに提出し、
それを糧にしてお客さまよりデータの種類を聞き出し、そのデータを伺いながらお見積もりを伝え、
「100%成功」をセールストークに契約を成立させるやや強引な方法と思われます。
このお客さまも初期診断結果を受け取った際にデータの種類を聞かれ、
それからお見積もりされたとの事です。
ちなみに、復旧不可にて戻ってきたため連絡を入れたそうですが、
まず繋がらず、繋がっても担当者は既に退職済にて相手にされなかったとまで。

まずは開封して内部を拝見させていただきました。

既に開封されているゆえ、まずは開封して内部の様子を伺う必要がございます。
HDDはIBM製 2.5インチ型です。
ご依頼いただきましたノートPCからHDDを取り出し、
その状況を拝見、上蓋を開封した跡(シール破れ)を確認。
基板側を拝見、ヘッドを固定するネジの山が潰れていました

すぐにドライバを当て状態を確認いたしましたが噛み合わず、
ヘッドを外す事の出来ない状態にされたようで、
すなわちヘッドの交換ができない(修理できない)状態と化しております。

このネジを締める通常のトルクで山が潰れることは考えられず、
大きさの合わないドライバでグリグリとしたのではないかと思います。

次に上蓋を外し、内部を拝見いたしました。
プラッタ上に指紋が付着し、ヘッド部分には手垢?のような不純物が付着していました。

※ 手垢に関しては、付着した指紋と金属が反応して生まれた物質
(訂正:のちに、テープの跡と判明致しました。いずれにしても不純物です)かもしれません。

調査は完了し、結局は何も出来ず復旧不可となりました。

大変申し訳ございませんが、
なにとぞご理解のほどよろしくお願いいたします。

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